緩和医療
緩和医療(palliative care)とは、世界保健機関(WHO)によって、「生命を脅かす疾患に関連する問題に直面している患者とその家族に対して、痛みや身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を早期に同定し、評価し、治療することで、QOLを改善するアプローチ」と定義されています。かつては、がんや後天性免疫不全症候群(AIDS)などに対する緩和ケアが中心でしたが、近年WHOは心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、腎不全、肝不全、多発性硬化症、パーキンソン病、関節リウマチ、神経疾患、認知症、先天性疾患、薬剤耐性結核なども緩和ケアを必要と認めています。
この緩和医療を理解するうえで、核となる概念を4つだけ選ぶと次の4語が最も重要と考えます。
- 全人的苦痛(Total Pain)
- 全人的苦痛とは、痛みをはじめとする身体症状や日常生活の支障である「身体的苦痛」、鬱々とした状態に陥る「精神的苦痛」、経済・仕事・家庭などの社会生活上必要なことが立ちいかなくなる「社会的苦痛」、がん罹患に伴う不安や怒り、苛立ちやさらに生きる意味への問いや死への恐怖、自責の念などを「スピリチュアルペイン」に分類され定義づけられています。(図1)
- このトータルペインは、英国のシシリー・ソンダース先生がロンドンに設立したセントクリストファー・ホスピスでの臨床経験から提唱され、緩和医療の根幹となっています。
- アドバンス・ケア・プランニング(ACP)
- 患者が将来の医療やケアについて、家族や医療者と繰り返し話し合い、意思決定を支援するプロセスをいい、厚生労働省では、人生の最終段階における医療・ケアについて前もって考え、家族や医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い、共有する取り組みをACPと呼び、その愛称を募集し「人生会議」という名称が選ばれました。
- ACP実践のガイドラインとして、2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が厚生労働省から出されています。
- 症状緩和(Symptom Management)
- 疼痛、呼吸困難、悪心、倦怠感、不安など、生活の質(QOL)を損なう症状を包括的に緩和することを目的にしています。
- これには、オピオイドの適正使用や非薬物療法も含まれます。
- QOL(Quality of Life:生活の質)
- 緩和医療の最終的な目標。
- 「治す」よりも、その人らしく生きることを支えることに重点が置かれます。
一般社団法人 医薬品適正使用・乱用防止推進会議
副代表理事 加賀谷 肇 (湘南医療大学薬学部 臨床薬剤学研究室 教授)