医薬品の適正使用や乱用防止に関わる用語の解説をシリーズで行なってまいります。取り上げて欲しい用語などありましたら、本法人事務までご連絡ください。

1.オピオイドとは?

オピオイド受容体作動薬、オピオイド受容体拮抗薬などの用語を聞かれることがあると思います。モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬(Qとして説明)が特異的に結合する部位をオピオイド受容体と言い、モルヒネのようにオピオイド受容体に特異的に結合する物(リガンド)をオピオイドと呼びます。図に示したようにオピオイドはオピオイド受容体作動薬 (agonist)とオピオイド受容体拮抗薬(antagonist)に分類されています。
オピオイド受容体作動薬はオピオイド鎮痛薬とも言われ、鎮痛などの作用を示します。オピオイド鎮痛薬の中で麻薬及び向精神薬取締法によって麻薬に分類されているものには、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、ペチジン、メサドン、タペンタドールがあります。同様にオピオイド鎮痛薬で向精神薬第2種に分類されるものとしてペンタゾシンとブプレノルフィンがあります。さらに、オピオイド鎮痛薬であるにも関わらず一般医薬品に分類されている薬物としてトラマドールがあります(図)。一方、これらのオピオイド鎮痛薬が過剰投与されて呼吸抑制などの有害症状が発現した際に、オピオイド受容体拮抗薬が用いられます。オピオイド受容体拮抗薬はオピオイド拮抗薬とも言われます。オピオイド拮抗薬はオピオイド受容体に対する結合力が非常に強いため、オピオイド受容体に過剰に結合したモルヒネなどのオピオイド受容体作動薬を追い出して結合することができます。そこで、米国のオピオイド・クライシスでは過剰なオピオイド鎮痛薬の投与による呼吸抑制などの有害症状に拮抗して救命するために薬局で使用音声ガイド付きナロキソンが販売されています。オピオイド拮抗薬としてレバロルファンやナロキソンがあるが、レバロルファンは初期の薬物であり弱い鎮痛効果も発現することから選択性の高いナロキソンがオピオイド拮抗薬として一般的に用いられています。


文責:鈴木 勉

2.医療用麻薬とは?

麻薬を広辞苑で調べてみると「麻酔作用を持ち、常用すると習慣性となって中毒症状を起こす物質の総称。阿片・モルヒネ・コカインの類。麻酔剤として医療に使用するが、嗜好的濫用は大きな害があるので法律で規制。」と記載されています。阿片(アヘン)・モルヒネ・コカインの類とは麻薬及び向精神薬取締法で麻薬として規制されている薬物に当たります。
麻薬の捉え方は各立場により異なる。図に示したように、国民の捉える麻薬は身体依存や精神依存を引き起こす麻薬、覚醒剤、大麻、幻覚発現薬、コカイン、ケタミンなどの薬物を示しています。一方、麻薬及び向精神薬取締法の用語の定義で、「麻薬は別表第一に掲げる物をいう。」と定義されています。すなわち、この別表第一に記載された薬物が全て麻薬として規制されています。これらの内、有効性と安全性が確認され、国が医薬品として承認した薬物が医療用麻薬と呼ばれています。図に示したように、医療用麻薬にはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、ペチジン、メサドン、タペンタドールなどの麻薬性鎮痛薬とモルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシメテバノールなどの麻薬性鎮咳薬があります。がん性疼痛のような強度の痛みに対して麻薬性鎮痛薬が用いられ、また強い咳嗽、特に乾性咳嗽に麻薬性鎮咳薬が効果的に用いられています。それ以外に、コカインも麻薬として規制されており、LSD25などの幻覚発現薬も麻薬として規制されています。さらに、危険ドラッグの中でも乱用されやすい物は麻薬として規制されています。


文責:鈴木 勉