第4回 埼玉医科大学救急センター・中毒センター 上條 吉人先生

対談担当者:小島 尚(一般社団法人 医薬品適正使用・乱用防止推進会議 副代表理事)

上條 吉人先生のご略歴

埼玉医科大学救急センター・中毒センターのセンター長、救急科教授を務める
日本救急医学会専門医・指導医
日本精神神経学会専門医・指導医
日本総合病院精神神経学会専門医・指導医
精神保健指定医
日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト

1982年: 東京工業大学理学部化学科卒業
1988年: 東京医科歯科大学医学部卒業
1992年: 北里大学医学部救命救急医学講座入局
2004年: 北里大学医学部講師
2014年: 北里大学 医学部メディカルセンター救急センター教授
2016年–現在 : 埼玉医科大学医学部教授

 

『シリーズ:オピニオン・リーダーとの「対談」』
第4回の対談は、埼玉医科大学救急センター・中毒センターのセンター長 上條 吉人先生にお願い致しました。

~Question1~
小島)
ERに搬送される患者さんでは医薬品及び薬物が原因となっている健康被害はどのような状況でしょうか。近年の特徴、医薬品及び薬物の種類、地域性、年齢等による違いなどを含めて、全体的なお話をお聞かせ下さい。

上條)
全体の概要について
ERに運ばれてくる患者さんは結構多く約1割が中毒患者です。その中の半分くらいが医薬品です。その中で最も多いのが向精神薬です。
1番多いのがBZP系薬です。順位を挙げるとエチゾラム(デパス等)が一番、フルニトラゼパム(ロヒプノール等)、トリアゾラム(ハルシオン等)、ゾルピデム(マイスリー等)、です。
以前は、その次はベゲタミン(バルビルーツ酸含有剤)でした。
ベゲタミンは製造が中止になってからはだいぶ減ってきました。
デパス・サイレース・ハルシオン・ゾルピデムと言うように、わが国の依存性薬物と同じです。依存性と中毒性・過量服用が比例していると言うことです。
その他の向精神薬も多いですが、向精神薬以外では市販薬です。その中でも圧倒的に多いのが風邪薬ですね。市販の風邪薬の成分の多くはアセトアミノフェンです。アセトアミノフェン含有の風邪薬が多いです。
アスピリンはだいぶ減りました。イブプロフェンが入っているものがありますがイブプロフェンは重症化しません。
消化器症状で嘔気・嘔吐が出るのですが重症化しないので運ばれてこないケースもあるのかもしれません。
また、問題になっているのはカフェインです。2013年ぐらいから急に増えています。その頃から平行してエナジードリンクが流行り出しました。自動販売機で買えますし、ドラッグストアや薬局で簡単に手に入ってしまうそういうことが背景になっていると思います。
急性で運ばれてくる患者さんの多くはエナジードリンクではなく、錠剤でカフェインを摂取している患者が多いです。
ドリンク200mLに含まれるカフェイン量と同じ位のものが1粒の錠剤に入っているので過剰摂取をしてしまいやすいというのが背景にあると思います。
エストランモカ錠では一錠に100mg含まれていますが、それを飲み過ぎて運ばれてくるケースが最近は多いです。
地域性では、都市部の中毒では向精神薬が多く、地方、農村部では農薬等が多くなる傾向があります。全体的には農薬は減ってきていると感じています。
年齢的な特徴では向精神薬を服用する患者は若い女性に多いですが、しかし実際に調べてみると40代が多いです。もしかすると25年位前には圧倒的に若い女性(20代の女性)が多い傾向にありましたが、最近は40代・50代の患者さんも増えています。
中毒になる患者さんの年齢も少しずつ変化というか年齢が上がってきていると言う気がします。

カフェインの乱用に関する問題
カフェインに関しては30代の男性が多いです。その使用目的は自殺もありますが、やはり眠らないように飲み過ぎてしまうことが多いと思います。
日中仕事をしていて夜も仕事をしている、その眠さを紛らわすために飲んでしまい嘔気・嘔吐を繰り返すようになり運ばれてきた患者が居ます。
カフェインの予後は悪く重症化するケースも多いです。中毒量は1g 、致死量は6gです。
致死量以上飲んでくる患者さんもかなりいます。その症状としては嘔気・嘔吐、イライラ、不穏、興奮などがあります。
その他には頻脈、過呼吸になり、重症になると不整脈が出ます。
さらに心室頻拍や心室細動、不整脈で亡くなるケースもあります。
100例で統計を採った際に7名が心肺停止して3名が死亡してします。
カフェインの中毒は思っているよりも怖いです。
カフェインの構造トリメチルキサンチン誘導体で、喘息治療薬テオフィリンはジメチルキサンチン化合物です。テオフィリンではTDM(血中濃度をモニタリング)を行い、使用に際しては注意喚起がされています。
それに対して、カフェインは食品でも用いることができ、インターネットなどで簡単に入手出来てしまいます。ひと箱20錠から24錠入っているものが200円から300円くらいで、1錠あたり10円位で手に入ります。
一方、エナジードリンクは1本200~300円します。エナジードリンクで眠気を覚ましている人達が安価で簡単に飲めてしまう錠剤に移行していくケースもあるのではないかと思っています。
カフェイン乱用ではカフェインの錠剤が簡単に制限なく入手できることが一番の問題だと思います。
(記憶は定かではありませんが)スウェーデンでは以前は200錠位購入できたのですが、死亡例が多いと言う事で一回の購入を30錠位に規制しました。それにより、死亡例が減ったという事もありました。
処方薬テオフィリンは注意されているにも関わらず構造が似ているカフェインに関しては規制がされていない、そこが非常に問題だと思っています。
カフェインはお茶やコーヒーにも入っていますが、飲み物で摂取しても重症になる方は居ません。
カフェイン致死量6gと言うのは約60杯。これを短時間ではなかなか飲む事はできませんが、錠剤で60錠を取る事は簡単なので…。
ERに搬送されてくる患者は100錠位飲んでいる人も居ます。やはり錠剤の飲み過ぎが問題なので規制しなければいけないのではないかと思います。
ただカフェインに関しては飲み物や食べ物にも入っているので規制となると難しいと思います。そのため、食品に含まれるカフェインと錠剤のカフェインなどは分けて考えなければいけないし、そうしないとカフェインの問題はなかなか解決しないと思っています。

~Question2~
小島)
医薬品のなかでも、わが国はベンゾジアゼピン系薬物(BZP)の使用量が諸外国に比べ、多いことが指摘されています。これらの医薬品が原因となって発生する中毒や事故はどのような実態でしょうか。その他、向精神薬による中毒の状況はどのような特徴でしょうか。アメリカではオピオイドの乱用が問題となっていますが、わが国ではどのような状況でしょうか。


上條)
BZPの概要
最近はエチゾラム(デパス)の離脱で来られる患者さんが増えてきています。エチゾラムを他の薬剤に切り替えるときの不安発作様の症状で来られる方が増えています。また、せん妄が起こる高齢者が多くなってきています。
エチゾラムの乱用に関する問題から注意喚起がなされ、その規制が強められました。そこで、違う薬に切り替える事による離脱で症状が出てしまっています。逆に言うとエチゾラムが長期にわたりいろいろな患者さんに使われてきたというのが背景にあると思います。
高齢者の方が「デパスを使い過ぎた」「家庭でのトラブルでつい飲み過ぎてしまった」というようなケースもあります。
以前はBZP等の抗不安薬等の問題は若い女性の患者が多かったのですが、最近では中高年や高齢者の患者さんが増えてきています。患者さんの高齢化によって使用薬物が変わっており、やはりBZPが中心になっています。
更に、問題なのはERに転倒して骨折した80代90代の患者さんが来るのですが、デパスとマイスリーを服用していました。処方は精神科ではなく内科や整形外科などですが、それによってふらつき転倒を起こしたと言うケースが増えてきています。
また、患者家族等に伺うと、認知障害があり、夜間は徘徊するケースもあります。これらの事例では転倒・ふらつきだけでなく認知機能の低下を起こします。
高齢者では安易なBZPの処方が様々な問題を起こしています。高齢者に対するBZPの処方に対する注意喚起をしていかなくてはいけないのではないかと思います。安易な処方によって寿命を短くしてしまう可能性もありうると思います。
2012年位からの情報だとBZPを長期使用している患者さんは認知症の発症率が高いと言われている、そもそもその原因になっているということですね。
「家でふらついている」、「最近、物忘れが酷くなった」、「夜になると落ち着かなく徘徊する」などのような症状に気づいたら、薬が原因なのではないかと疑うことも大事です。また、家族と医療者が情報共有し合うことが大切ではないかと思います。
デパスやマイスリーでは認知機能の低下やせん妄などの障害を生じることから、高齢者への処方では注意を喚起する必要だと思います。BZP長期投与では、調剤薬局等の薬剤師が高齢者への投与に注意を払うことが必要です。

その他の向精神薬

BZPが圧倒的に多いですが、ベゲタミンもまだ時々はいます。ベゲタミンは販売が停止され、乱用による患者は減少してきました。
しかし、製造中止前に大量に何十万錠と仕入れたところがありました。そういうところはまだ在庫持っていているため製造が中止になってもまだ流通しています。
そのため、中毒も見られると思います。フェノバルビツール酸系(ペントバルビタール)のラボナは製造中止なっていません。
ラボナは50錠位で呼吸が停止します。少数ですが、過量服薬した方が実際に死亡した事例が発生しています。
フェノバルビツール酸系の離脱のために、BZPに置き換えようとしても効果等が弱く、ベゲタミンの離脱のためにラボナが用いられているケースもあります。それにより、ラボナの乱用にいたる可能性もあります。ベゲタミンは流通しなくなりましたが、BZP、その代わりにラボナが処方されている事態も考えていかなくてはいけないと思います。ラボナもベゲタミンと同じように規制する必要があると思います。

~Question3~
小島)
OTCによる健康被害や中毒の実態は如何でしょうか。近年、カフェインを大量に含む飲料、ビバレッジ等のサプリメントが流通しており、死亡事故も発生していますが、このようなサプリメントを原因とする状況は如何でしょうか。

上條)
OTCについて
風邪薬に関してはやはり20代の女性が多くなっています。
中毒量では、風邪薬ではアセトアミノフェン150mgで、1錠あたり100~150mg入っています。そこで、体重と同じ位の錠数を飲むと危険です。例えば40kgなら40錠、50kgなら50錠となります。
鎮痛薬や感冒薬の主成分がアセトミノフェンやイブプロフェン、アスピリンですから。
これらを主成分にした過量服薬はやはり多いです。
イブプロフェンは毒性があまり強くないですから重症化するケースは少ないですが、アセトアミノフェンの過剰摂取は肝不全になりますから危険です。イギリスでの生体肝臓移植の多くの原因はアセトアミノフェンです。日本ではあまり肝移植までするケースは少ないです。アセトアミノフェン中毒ではシステインを解毒薬として用いますが、その判断には血中濃度を見ます。実際に血中濃度を測ってみると解毒薬治療が必要ではないケースも多いです。おそらく、日本では運ばれてくる前に吐いてしまっているケースが多いようです。
以前は、ブロンの乱用は多かったです。リン酸コデイン(モルヒネ系)の依存もありましたが、今ではこの薬の大量摂取での患者はあまり見なくなりました。

オピオイド系薬物
日本ではオピオイド(麻薬)系の乱用は少なく、処方が厳しく規制されているためだと思います。
基本的に日本ではがん性疼痛ではないとオピオイド系の薬は処方されないためその搬送が少ないです。そのため、私の経験ではオピオイド系の中毒は米軍などのアメリカ人に多いです。日本の麻薬中毒は欧米などに比べると本当に少ないです。
日本のオピオイド鎮痛薬の依存については非常に良い状態だと思います。
これを維持していくためには啓発活動が必要になってくると思います。また、がん性疼痛やターミナルケアなど緩和医療の現場では必要な患者さんにはきちんと処方されるべきであるとも思っています。
また、弱オピオイド(麻薬系鎮痛薬)のトラマドール(トラムセット等)の依存もあまり見られません。依存性が低い薬物のため、中毒があまりないのも理由の1つだと思います。

医薬品での注意すべき事柄
若い人たちは普段から使用している薬を飲みすぎてしまうケースが多いです。BZPや鎮痛剤の過剰摂取、カフェイン等がやはり中心になっています。やはり普段から飲んでいる薬での中毒が多いです。
BZP等は犯罪にも使われており、レイプドラックとも呼ばれています。日本でも結構それはありまして、飲み物などに混ぜて飲ませてしまうというケースです。
過去に昏睡強盗などに使用された事がありますが、チョコレートなどに混ぜたりしていました。
このような経緯もあり、2015年の厚労省の指導でロヒプノール錠では水に溶かすと青くなるようになりました。
最近見た患者の中では、こん睡状態で口の中が青く、おそらく飲まされたのだと思います。後日、本人に聞いたところ、ラムネを飲まされたと言っていたので、多分カモフラージュされて飲まされてしまったのだと思います。
欧米ではレイプドラックと言われてBZPを所持していれば逮捕されます。しかし日本では医薬品での規制がないことが問題だと思っています。医薬品の処方に関する注意喚起、また、医薬品による健康被害などの課題が存在することを、医療者に適切な啓発を行ってほしいと思います。簡単に処方されてしまうというのがあると思います。
更に、犯罪に使用されていると言う事は生活保護等の制度を利用して、暴力団等が背後で不正入手していることも考えられるでしょう。生活保護の方に眠れないなどと言って処方させてそれを横流しするというケースが多く見られると思います。きちんと処方されていないことが犯罪につながっていると思います。
また、若者を中心にBZPをパーティードラックなどに用いられていますが、これもBZPの乱用だと思います。処方している医薬品が実際には目的外使用となっています。その原因はやはり安易な処方にあると思います。眠れないと言えば簡単に処方してくれる、そこが問題だと思います。
乱用の事例ではロヒプノールとハルシオンを組み合わせて出しているケースが多く見られます。目的外使用を目的とする場合には、医薬品が欲しいために、医師に「この組み合わせ出してください」と患者の方からオーダーしているケースも考えられますね。

医薬品からの離脱での注意
エチゾラムやベゲタミン等では規制が強化されて医薬品の種類も変更されることがあります。その結果、規制医薬品から他の医薬品に移行する場合には移行は徐々に症状を見ながら行うことが大切だと思います。
ベゲタミン等では離脱に大変苦労します。せん妄が激しく、また、痙攣発作で搬入されるケースもあります。長期服用していた患者さんに関してはゆっくり医薬品を置き換えることが大切だと思います。
ベゲタミンの事例ではその問題点が強く指摘され、急に中止する等の急激な処方変更が行われることがあります。難治性の睡眠障害では、置き換えの過程でBZPを用いても症状の改善が見られず、ペントバルビタール(ラボナ)での移行措置が必要となり、ケースによっては医薬品の乱用が継続してしまう事があります。

~Question4~
小島)
数年前、危険ドラッグなどの作用が検討されていない化学物質が出回っていましたが、その後、中毒の状況はどのように変化しているのでしょうか。また、中毒患者はその後、他の薬物による健康被害を繰り返すような実態はあるでしょうか。また、覚せい剤をはじめとする規制薬物による健康被害は如何でしょうか。

上條)
危険ドラッグ以外の健康食品等を含む概要
以前は中国などから入ってくるやせ薬は問題になりました。健康食品では血糖降下薬を含有する健康食品を服用して低血糖を呈して搬送された事例がありました。最近は減りましたが、実はやせ薬と称した糖尿病薬だったと言うケースもありました。ですからネットで購入できる薬も問題になっていると思います。
第二世代の三環系抗うつ薬アモキサピンを含む健康食品を服用した事例では痙攣発作を起こしています。場合によっては痙攣発作で亡くなるケースもありました。
海外諸国等から輸入する医薬品だけではなく、健康食品やサプリメントでは何が含まれているかわかりません。本来の薬では考えられない副作用や症状を呈するケースがあります。安易にネット等で輸入される医薬品、また健康食品では危険があると思います。

危険ドラッグのその後は?
危険ドラッグの状況は、欧米ではハーブはカンナビノイド系で、パウダーはカチノン系ですが、日本では一つの製品に様々な成分のものが含まれています。
日本では多数の医薬品等が含有されていて成分が分からない闇鍋状態です。
危険ドラッグは作用が検討されていないものではなく、その有害性も十分に解明されていないので危険性が一段と高い状況にあります。

昨年台湾で日本の危険ドラックの現状をお話しする機会があったのですが、日本では危険ドラックを抑え込めたと言うことに関して世界は注目しています。
それは名称を「危険ドラック」に変えたり、初回改正では指定薬物は所持や使用では罰せられなかったのですが、それが変わったりと規制が強化されました。
日本ではかなりドラスティックに行ってきたことが「抑え込めた」背景にあると思います。また、厚労省だけでなく警察が介入した事によってある程度成功したとも思います。
その背景にはやはり日本で他人を巻き込んでの死亡事故等が発生したことが大きな要因だと思います。

その他ガスなど
他には以前はシンナーでしたが、ガスパン等で搬送されてくる患者もいました。
少し前までは心肺停止等で搬送されてくるケースもありましたが、最近はほとんどなくなりました。
ネットなどで販売されている業務用ヘリウムガス等もありました。自殺などにも使われていましたが、非常に危険です。
ヘリウムは血中に吸収されると空気塞栓(気体の塞栓)を作るので脳梗塞のような症状が出ます。
マジックマッシュルームや笑気ガスなど、今後も次々に新しいものが出て来たり古いものがまた使用されたりするかもしれません。
「危険ドラッグ」と呼ばれるような化学物質や植物等では、新たなものが出現する可能性がありますが、危険性がはっきりしていないので絶対に手を出さないようにしなければいけません。

~Question5~
小島)
ER及び中毒の立場から医薬品適正使用及び薬物乱用防止活動に期待すること、また、望まれることをお話しいただけないでしょうか。

上條)
日本における医薬品等の乱用での課題
日本における危険ドラックや依存薬物の使用実態は欧米などに比べると圧倒的に少ない状況にあります。
それは若年層からの啓発教育活動が成功しているものだと思います。
ただしOTC薬に関する啓発は今後もっとやっていかなければいけないと思います。
大きな問題は合法的な薬物に関しても依存が存在することを正しく啓発していくべきだと思います。
違法薬物に関する啓発は正しくできていますが、合法薬物に関してはまだまだ啓発が足りないのかなと言う印象を受けます。
これから医師になる医学生や看護学生に対してもOTC薬や処方薬に関する教育は本当に必要な事だと思います。
医師なども科が違うと他科の薬剤の危険性等をあまり知らなかったりするので、他科の薬の教育も必要だと思います。
後発品の多さも紛らわしさを増やしていると思います。名前は違いますが同じ成分であったりしますので。

製薬会社等に求めるもの
1番の問題なのは薬が発売されて製薬会社がいろいろな情報を提供してくれます。
ところが後発品では担当者すら居ない場合があります。いろいろなネガティブなことが明らかになっていたとしても、販売している製薬会社はフィードバックしていない現状があります。
使用事例が増えるといろいろなネガティブなことがわかって来るのにその情報を現場に返してくれるシステムがない、或いは脆弱です。
また、先発メーカーでも当該の医薬品について把握している担当者が居なくなってしまっていると言うのが現状です。
薬価もかなり下がってきているので、製薬会社としては商売として考えると当然かもしれませんが、薬の副作用等の情報はある期間使って、使用実績が増えることにより発生するものが少なくなく、無視できません。
なかなか情報が現場に回ってこないというのが現状です。
また、BZPには依存性が低いと言われていましたが、実際には精神及び身体的にも依存性が認められ、メカニズムから考えても強弱はありますが考えられます。そのような情報も現場では入手することができない。
フィードバック義務じゃないですけど…。この辺は行政からも少し働きかけてほしいと思う部分です。

小島)
確かに、薬機法では医薬品等では市販後に好ましくない症状が出現した場合、また、健康被害を生じる可能性が国内外で指摘されるような情報が得られた場合には速やかに厚労省に伝えるように製薬会社には求められています。しかし、医療機関までに伝えるように強くは求められていません。

上條)
行政に求めること
カフェインの規制について厚労省、農水省などの関係機関が連携して規制をする必要がある物質であることを認識してほしい。
食品中に含まれるカフェインと錠剤に含まれる化学物質としてのカフェインの違いがあることを明確にして規制を検討してほしい。
救命救急の現状や乱用の実態から放置する事のできない状況であると思います。

当法人等の啓発活動に対して求めること
低年齢からの啓発活動は不可欠なものと考えられ、今後とも継続的に啓発活動を続けていく必要があると思います。

本日はお忙しいところ、長時間、お話しいただきありがとうございます。
今後とも救急搬送される患者さんの予後が改善されるように上條先生はじめ、救命救急のスタッフの方々のより一層の活動をお願いして対談を終了させていただきます。

小島)
現在、埼玉医大の救命救急には精神科のドクターも待機され、対応を取っているそうです。自殺をはじめ、カフェイン中毒にあるような若年層、また、抗精神病薬を服用して外科疾病を含む救急搬送の高齢者では精神科領域での対応が求められるケースも多いと伺いました。今回、先生からいただいた情報は我々、1次予防でも重要な指摘であり、若年層からの医薬品適正使用また薬物乱用防止教育の必要性と推進する必要性が強く示唆されました。これからも当法人では医薬品の適正使用や薬物乱用防止のための活動を継続的に推進するよう努めます。

後記
ERカンファレンスルームで術着姿で、快く対応くださった先生は3日ぶりに当日は帰宅されるとおっしゃっていました。その間もPHSがなり、救命救急センターから連絡がありました。朝、10時過ぎ伺いましたが、ERには患者さんが治療を待っていました。お忙しいところ、貴重なお話をいただき、改めて御礼申し上げます。

参考文献
1. A Retrospective Study on the Epidemiological and Clinical Features of Emergency Patients with Large or Massive Consumption of Caffeinated Supplements or Energy Drinks in Japan. Yoshito Kamijo, Michiko Takai, Yuji Fujita. and Kiyotaka Usui . Internal Medicine · March 2018
2. A multicenter retrospective survey of poisoning after consumption of products containing novel psychoactive substances from 2013 to 2014 in Japan. Yoshito Kamijo Michiko TakaiYuji FujitaTetsuya Sakamoto. The American Journal of Drug and Alcohol Abuse 2016;42(5):1-7
3. A multicenter retrospective survey of poisoning after consumption of products containing synthetic chemicals in Japan. Kamijo Y1, Takai M, Fujita Y, Hirose Y, Iwasaki Y, Ishihara S, Yokoyama T, Yagi K, Sakamoto T. Internal Medicine, 2014;53(21):2439-45.
4. Demographics, clinical features, treatments, and outcomes of patients who were transferred to emergency facilities in Japan after consuming dangerous drugs. Kamijo Y. Nihon Rinsho. 2015;73(9):1497-500.

小島 尚 (こじま たかし)
帝京科学大学生命環境学部生命科学科 教授
一般社団法人 医薬品適正使用・乱用防止推進会議 副代表理事

1986年 11月 (財)ヒューマンサイエンス振興財団流動研究員
1988年 4月 東京薬科大学薬学部助手
1991年 9月 神奈川県衛生研究所食品薬品部主任研究員
2006年 4月 同 理化学部薬事毒性グループリーダー
1994年 4月 神奈川県立衛生短期大学等 非常勤講師(兼任)(薬理学,医学概論)
2011年 4月 帝京科学大学医療科学部柔道整復学科、同生命環境学部生命科学科(兼担)
同大学院理工学研究科修士課程バイオサイエンス専攻(兼担)